訪れ

訪れの

夢の小路を踏み行けば

人皆知らぬ黄昏の

棚引く影に暮れる街

 

声が行き交う露店屋で

小さな鳥がこう唄う

「お山を越えたらおっ母さん」

「お山越えたらお父っさん」

店屋の親父の滑々の

その額に見惚れては

此の耳朶を抓る俺

 

あれは嘗て

水溜で砕けた私の首だ

 

声が掠れる暗がりで

何時かの歌を口遊み

退くか進むか識らぬまま

来る人に向け会釈する

 

―思えば明日は何処へやら

―思えば明日は何処へやら

 

あれは本当に誰の仕業か―

 

夢の小路を踏み行けば

人皆知らぬ黄昏の

影揺れる街の夢の訪れ