2019-01-01から1年間の記事一覧

宇多田ヒカル『荒野の狼』について

宇多田ヒカル『荒野の狼』について。 この曲は彼女の孤独とリスナーの孤独が音楽という架け橋で結ばれていることを痛感する作品だ。 歌詞の進行としては彼女の独白だが、「歌」となった時点でリスナーも発生する故、"夢みられた対話"といったほうがふさわし…

GRAPEVINEの音楽の事

GRAPEVINEの音楽の魅力。 晴れやかでいて少し曇ってもいて、うつくしい雨を連想させる時もあるメロディー。 装飾をあまり纏わない引き算のシンプルさ故に想像力を掻き立てる歌詞。 なのに空想的では無く、リアルな感情が湧き上がる全体としての音楽の素晴ら…

さきがけ

青春の定義のような 社会の暗黙のような容認された秘密のような未来の追い付けない季節の中で邪な純情を縒り合わせるように曖昧な手続きをして君の唇を知った その日の街は裏腹で疑いようもないほど夏なのに雨の予感を孕んでた 交わす眼差しは眠りから覚め少…

夏の雨に濡れて

いっしょに行こう、と手を取って 夏に塗れたあなた 無邪気に笑う横顔が 射す日差しより眩しくて 愛しい気持ちが溢れだす 街は季節を吸い込んで 人家の軒の風鈴が 公園の子供等の半袖が 八百屋の店先の果物が 絵葉書みたいに特別で十年先の晩ごはんのとき 泣…

宇多田ヒカル『Passion』について

宇多田ヒカル『Passion』について。 私はこの曲に、海と死の予感を抱く。 『Passion』のイントロを聴くと、はっきりと海が、海に沈んでいくひとりの人間の姿が脳裡に浮かぶのだ。 死が光を失った世界から訪れつつあることが、刹那に了解されるその瞬間が。 …

自己紹介

はじめまして。 初投稿なので自己紹介をしたいと思います。 言葉の芸術作品が好きで、世界の眺めが変わるような文章に惹かれます。 好きな著者はウィトゲンシュタインです。 また、音楽は絶えず聴いており、切実なもがきを感じる作品には感動を覚えます。 好…