GRAPEVINEの音楽の事

 GRAPEVINEの音楽の魅力。

晴れやかでいて少し曇ってもいて、うつくしい雨を連想させる時もあるメロディー。

装飾をあまり纏わない引き算のシンプルさ故に想像力を掻き立てる歌詞。

なのに空想的では無く、リアルな感情が湧き上がる全体としての音楽の素晴らしさ。

彼らの音楽を聴いているときは何というか、自分の中で消化しきれなかった事柄に光を当ててくれたような気がする。だからと言って慰めるでもなく、励ますでもなく、ただ光を当てることによってその存在を認めさせ、自分にとって暗い所に隠していた想いの意味を考えさせる、そういう存在だ。それが目を細めて見つめるときもあれば、思わず顔をを覆ってしまいたくなる時もある。

晴れやかなメロディー、前進的な歌詞の楽曲を聴くと、「そんな時もあったなぁ」としみじみ感じて、それを未来に投影してまた一歩踏み出そうという気持ちが湧く。曇ったメロディー、伏し目がちな歌詞の曲では、自分の不甲斐なさに辟易する。やさしく肩を濡らす雨のような曲には、ただ涙。

彼らの楽曲の歌詞に"光"という言葉が多く用いられているのも、そう考えると納得できる。光を見出している歌詞には、光を発見しようとする田中氏の心が背後に存在している。その精神が音楽となったとき、それは光そのものとなってリスナーの心を照らす。

今年発表のアルバム『ALL THE LIGHT』のリリースインタビューでメンバーの西川氏が、“けっこう身近なことを歌っていると思ってるんですけど、そういう意味では切実ですよね。切実さは、ずっと変わらない。切実だということは、身近なことが非常に大問題だという意味なんじゃないですか”と述べていた。切実なこと、つまり自分とは切っても切り離せない事を歌う彼らだからこそ、リスナーの心は強く揺さぶられるのだろう。

 GRAPEVINEの音楽。それは過去を手放して今を未来を生きることの出来ない己れという存在を、自分自身に強く自覚させる真っ直ぐな「光」なのだと思う。