GRAPEVINE

GRAPEVINE『停電の夜』について

GRAPEVINE『停電の夜』について。 人が住まう街には、光が溢れている。 報道が流れるスクリーン。煌々と文字を告げる看板。ディスプレイを過る無数の生活。 それらは光であるのに、私達の眼には、闇を切り裂く一条の力として感じられる事は無い。 それは私達…

GRAPEVINE『雀の子』について

GRAPEVINE『雀の子』について。 この曲は、GRAPEVINEの愛の歌である。 田中和将は、愛を語る人ではなく、愛を生きようとする人だ。 愛の歌を作る彼の手つきは、普段料理を作らない父親が我が子を想って夜食を即席で作るような、ぶっきらぼうな優しさが滲む。…

GRAPEVINE『Ub(You bet on it)』について

GRAPEVINE『Ub(You bet on it)』について。 この曲は2019年発表の『Gifted』の止揚的消化の結実である。 『Gifted』に託された「若い私」<以下、便宜的に"彼"と称す>が、終に己の出番を認識する。その一局を描いた曲だ。 『Gifted』で彼は世界を眺める視座…

GRAPEVINE『ぬばたま』について

昨年発売されたGRAPEVINEのアルバム『新しい果実』のなかに、『ぬばたま』という曲がある。 “愛がすべてなんて言われてはかなわない”という歌い出しから、田中和将の舌鋒鋭い一曲だ。 “正義面の裏の裏 丸見えだって”と続く歌詞も、彼ならではのフレーズであ…

GRAPEVINE『指先』について

GRAPEVINEの名曲、『指先』。 喪失という事実を眼前に据えられた人間の、前向きな転換でも後ろ向きな拒絶でもない新たな出発の歌。 心の空白を別の存在を代置することで埋めず、空白に背を向けて他の対象を眺めることで忘却しない生き方、空白を身に感じて明…

GRAPEVINE『アナザーワールド』について

ふと、GRAPEVINEの『アナザーワールド』を聴きたくなる時がある。 明日に進まなければならないのに、過去に呼び止められた雑踏で。 言葉にならない悲しみが、記憶に爪を立てる夜に。 人間と共に生きていくということは、誰にも言わぬと決心した瞬間を積み重…

GRAPEVINE『Gifted』について

GRAPEVINEの新曲、『Gifted』がリリースされた。 およそ二年ぶりの新曲、ほんとうに嬉しい。 直近のアルバム『ALL THE LIGHT』はとても清々しいサウンド、人生をこなしていく日常への、"愛ある眼差し"(バイン必須のワード、光、とも取れるか)を感じる作品…

GRAPEVINE『Wants』について

GRAPEVINE『Wants』について。 私はこの曲を聴いて、直球のラブソングだ、という印象を強く抱いた。 実際に聴いてもらうと分かるだろうが、歌詞のなかには「好き」という言葉も、「愛してる」という台詞も存在していない。恋が成就したとか進行中だとか、別…

GRAPEVINEの音楽の事

GRAPEVINEの音楽の魅力。 晴れやかでいて少し曇ってもいて、うつくしい雨を連想させる時もあるメロディー。 装飾をあまり纏わない引き算のシンプルさ故に想像力を掻き立てる歌詞。 なのに空想的では無く、リアルな感情が湧き上がる全体としての音楽の素晴ら…